タイトル

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第6回 第7回 第8回前編 第8回後編 第9回




 ここまでくると、どういう書き出しをすればいいものか、ヒジョーに悩むところですが・・・お元気ですか?いつものように、突然の甦りです。しかも、前回の文末で予告していたような「博多編」ではありません。あの話は・・・文中でも触れられていますが、お蔵入りになるどころか収録さえされませんでした。あははは・・・。その代わりと言ってはナニですが、今回のネタは新鮮ピチピチです。なんせ、3年近くも熟成させた前回とは違い、ついこの前、9月に行われたサイン会ツアー時に食したラーメンについて語っております。バリバリの書き下ろしならぬ、語り下ろしです。やっぱり、ネタは新鮮じゃないとね。と、いうことで久しぶりのラーメンワールド、今回も濃ゆいです、先ちゃん&徳さんは相変わらずのラーメン者です。さぁ、誘い誘われいざ行かん!(2007.10.26)

T: では、そろそろ始めるとしますか。
E: いつもこういうはじまりだけど・・・、いやぁ〜、久しぶりですな(照笑)。
T: なんと、前回の更新は2006年の1月!相変わらずのていたらく。
E: もう2年近くも放ったらかしってこと?はぁ〜っ(ため息)。
T: しかも、その更新した内容っていうのも、実は2003年5月に語ったもの。
E: グッ(言葉に詰まる)。ってことは4年半ぶりかい。なんて怠惰な・・・(苦笑)。でも、そんなにたってる気もしないけどね。
T: まぁ、ラーメン話自体はいつもしているからね。
E: そう言えば、今回のサイン会ツアーでもたくさんの人に、「ラーメンとCDの更新を待っています!」って言われたね。
T: みなさんがこのグウタラなホームページを見てくれている、ということが身に沁みてよーくわかりました。
E: ありがたいことです。
T: サイン会をホームページで知ったという人も多かったしね。
E: だから、日記だけはなるべく更新するように心がけてはいるんですよ。
T: 特にイベントの前は、やけにマメに更新していますな。
E: あははは、バレてたか。
T: 当たり前じゃ。と、いうわけで巨匠。今回の道場やぶりのテーマの発表をお願いします。
E: えー、7月に新刊のキャラ者3巻が新装版の1、2巻と共に3冊同時発売されまして、それを記念してサイン会ツアーを行うことになりました。これは全国10箇所を回るスケジュールで、特に9月は週末のたびに各地へ出かけるという過酷なもの(笑)。そんなワケで、どうせ行くのならその土地のラーメンを食い、語ろうじゃないか、ということですな。
T: 我々はこれまでも各地でサイン会があるたびに、必ずその土地のラーメンを食ってきました。それがあるからこそ、ウキウキワクワクいそいそと出かけて行くと言っても決して過言ではないワケで・・・。
E: でも、これだけ毎週のように遠征するという機会はこれまではなかったし、だったら「道場やぶり」として語らないともったいないぞと。
T: と、いうわけで超久々の更新です。サイン会は7月に青山と吉祥寺でやって、8月はお休みで、9月1日(土)からが本格的なスタート。
E: 朝早い新幹線でまずは、広島へと。
T: あの朝の先ちゃんは酒臭くてさ〜。それが広島までずっと続いて、オレほとんど拷問(笑)。
E: えへへへ。実は前日にDJイベントが下北でありまして、自分の出番が終わったら速攻で帰ろうと心に誓っていたのに・・・気がついたら朝まで飲んでた(照笑)。
T: どおりで新幹線の中では爆睡なワケだ。
E: そのおかげで、着いたらもうシャキーンで、さてラーメン食うぞと。
T: 広島は今回のツアーのスタートですから、ワタクシも事前に気合を入れてラーメン情報を収集しました。
E: 後半になるにしたがって全く調べなくなったけどね。
T: あははは。
E: で、その結果、広島ラーメンで有名なのは「陽気」と「すずめ」という店だと。
T: だから、どうにかしてその店に行こうとしたんだけど、営業が夕方からだったり、定休日だったりして今回は無理だということがわかった。
E: 俺たちがサイン会で各地に行くときは、昼頃に現地に入ってラーメンを食い、茶をして、サイン会、そして夜は飲み会というのが基本の行動パターンだから、夜しか営業していないラーメン屋には行きにくいワケです。
T: そこで、その二店の流れを汲んでいて、昼に営業している「つばめ」という店がいいんじゃないかと。これはネットからの情報だけど、広島ラーメンの元祖は「しまい」という店で、未だにそこはあるらしい。だけど、実はもっと前に屋台ではじめたナントカさんという人が食堂を始め、そこで出したラーメンが今の広島ラーメンのルーツらしいんだよ。で、その親戚筋が「しまい」をはじめて、そのまた親戚筋が「陽気」と「すずめ」をはじめたらしい。
E: 「しまい」ってのは姉妹の事だね。ルーツはひとつで、そこから派生しているってことね。
T: そうそう。「すずめ」と「つばめ」のほかにも「ひよこ」や「うぐいす」という店があって、小鳥系と呼ばれているんだって。
E: 小鳥系て可愛いよね(笑)。しかもな〜んか縁を感じますな(笑)。だったら「ひばり」や「つぐみ」もあるかもしれんね(笑)。スープは豚骨しょうゆで、ちょっとしょうゆ味が強め。これが広島ラーメンの基本的な味わいと見ていいんだよね。
T: そうらしいよ。


E: 具はチャーシューが4枚と細いモヤシ。飾り気もないし、ウワッという驚きもないけれど、フツーに美味しかった。あれは子供の頃から食べていたら、時々ムショーに食べたくなる味だと思うよ。
T: ワタシは正直、あの味好きです。チャーシューも旨いし。スープは豚の味がよーく出てたけど、豚骨だけじゃなくて鶏ガラや野菜も入っているから、九州の豚骨スープとは全然違う。我が家で冬によくやる豚シャブ鍋の、シメに食べるウドンのスープの味わいによく似ていたんだよね。
E: 豚の味わいだけに頼っていないから、しょうゆ風味が活きる。京都の「第一旭」にちょっと似ているなと思ったんだよね。
T: そういえば、関西以西のラーメンって、チャーシュー麺じゃないのに薄切りのチャーシューがたっぷり入っているものが多いよね。
E: たしかに。そして胃にもたれない軽い味わいのラーメンで、サクッと食える。
T: 良い塩梅にコクはあるけど、全く重くない。
E: 博多ラーメンより量は多いけれど普通よりは少なめだから、めちゃくちゃ空腹だったら一杯じゃ足りないかも。
T: だから、むすび(おにぎり)やおでんがあるのかもね。
E: ちなみに中華そばは550円で、おでんは各100円、むすび(2個入)が200円。食べ物メニューはこれだけとういう潔さ。
T: おでんやむすびがあるのは「つばめ」だけで、「陽気」や「すずめ」にはないみたい。だけど、大盛りもチャーシュー麺もないってところは同じらしい。
E: 作りつけのおでん鍋の中には串に刺さったおでんがグツグツと煮えていて、み〜んな食べてたね。
T: 俺らも食べたかったけれど、グッと我慢してむすびを頼みました。


E: 具は入っていないけれど大きめで、海苔が巻いてある。これがまたラーメンのスープとやたらに合うんだよ〜。で、働いているおばちゃんが、また気が利く。二日酔いだったオレはさすがにひとつしかおにぎりを食べられなくて、残念だけど残して店を出ようとしたら、おばちゃんがごく自然に「持っていきなよ」って包んでくれた。その自然な気配りが堪らないんだよ。
T: 良い店って入ったときの匂いというか空気感でわかるじゃん。従業員がキビキビ働いているとか、お客さんの顔が自然に幸せそうだとか。「つばめ」も店の扉を開けた瞬間に、ココは良い店だとわかる典型的な店だったよね。誠に正しく美味しい味わいで、オレはファンになりました。
E: ラーメン丼がカワイかったことも含めて、大満足。
T: そうそう、あの丼は今まで見たことのない形だったね。カツ丼なんかの丼に似ているけれど、それとも違う。
E: 九州ラーメンの丼のように小さくて、だけど背はちょっと高くて少し丸みを帯びている。なんにせよ、今回のツアーの一杯目を飾るのにふさわしいラーメンでした。
T: ラーメンの味わいだけじゃなく、お店の成り立ち方もとても気持ち良い店でした。そんな幸せな気分のままサイン会へ突入し、終わったあとは恒例の飲み会。いやぁ、大騒ぎでしたな。
E: 和田ラヂヲがわざわざ愛媛から駆けつけて来てくれたりして、大いに酔っ払って盛り上がって、笑いすぎて疲れた(笑)。そして、そんなノリのままみんなでラーメン屋へ行ったんだけど、誰かさんはいなかったなぁ(チクチク)。
T: いやぁ・・・。
E: ラーメンに対する気合が足りんですな(さらにチクチク)。
T: (無視して)あのラーメン屋は美味しいって地元の人がみんな言ってたから、絶対に食べようと思っていたんだけど・・・睡魔に負けました。で、どうだった?
E: そこは「千番」という店で、ここもすっごい旨かった。基本的には「つばめ」と同じ味わいなんだけど、より濃厚で肉の味が強い。「つばめ」はマイルドだけど、ココのはスープもややコッテリ気味でチャーシューも厚切りなので、パンチがあったよ。


T: (写真を見ながら)おっ、ここはメンマが入っているんだね。
E: この厚切りでジューシーなチャーシューがこの店のウリみたいで、それが入ったチャーハンも旨かったよ。
T: チャーハンも食ったんかいっ。


E: 全員でラーメンとチャーハンを注文(笑)。でも、さすがに全部は食えなくて、そうしたらここでもおばちゃんがパックを持ってきてくれたので、みんなで持ち帰りましたよ。玉ねぎが入っていて、その甘みがなんとも言えずに美味しいチャーハンだった。
T: 広島と言ったら、尾道ラーメンしか知らない人も多いだろうけど、実は広島ラーメンってかなり美味しいよね。
E: ウン、かなりいい。広島の人は広島ラーメンをウリにしようとは思っていないみたいだけど。素朴でハッキリした押しがあるわけじゃないから、浅いレベルですぐブレイクするような類じゃないと思うけど、ジワジワと、気づいたらハマっちゃう味わいだと思うよ。
T: 誰が食べても美味しいと思える味だから、東京でも間違いなく受け入れられるはず。
E: 実はオレ、尾道ラーメンってのも食べたことないんだよね。
T: 俺も東京の尾道ラーメンしか食ったことない。
E: それも肉系の味わいなの?
T: 魚ダシがメインでそこに肉ダシが加わる感じだったな。東京のはそれとして、現地の正しい店で食べればきっと美味しいと思うんだよね。
E: 広島ラーメンは魚の味は全くしなかったから、同じ県だけど全然違う味わいなんだね。
T: だから、ラーメンはおもしろい。
E: しっかし、フツー広島と言えばお好み焼きなんだろうけど、俺たちにはその意識がカケラもない(笑)。
T: そう言えば、ラーメン以外は広島の味、食べてないね。
E: 広島と言えば・・・あとは牡蠣?
T: ・・・もみじ饅頭?
E&T うはははは。


T: で、翌日は大阪へと。
E: 昼飯は「自由軒」という、昔からある洋食屋。
T: ホントはラーメンを食べたかったんだけどね。でも、調べてみても大阪で人気のラーメン屋というのは、例えば九州や東京のラーメン屋がチェーン展開している店だったりして、大阪独自の店というのを見つけられなかった。
E: 大阪には美味しいモノがありすぎて、ラーメンにまで手が回らないのかな・・・。サイン会に来てくれた人に聞いても、「神坐(かむくら)」とか「金龍ラーメン」は出てきたけれど、「正直、本当に美味しいラーメン屋はない」って言う人が多かった。
T: 探せば必ずあると思うんだけど・・・ね。


E: だから「自由軒」。ここは、有名なので知っている人も多いと思うけれど、カレールーとご飯を混ぜ合わせてその上に生卵が乗っている、という、その名も「名物カレー」が名物の店。オレは、25年前に一度食べたことがあるんだけど、その時の印象は「あれっ、フツーじゃん!?」(笑)。
T: オレもその頃に食べたけど、印象は江口さんと全く同じ。やっぱり名物だし、期待して食べただけに・・・ね(苦笑)。
E: ところが、今回はあまり期待していないせいもあって、ふつうに美味しかった。
T: あっ、そう?オレは結構美味しかったよ。
E: そうなんだけど、あまりにシンプルすぎてフックがないから、途中で飽きる。カレー好きの俺でも、最初から最後までずっーと同じ味で具もないしね。食べ方にバリエーションが欲しいワケですよ。だけど、かき込むご飯としては楽しめると思うな。
T: ルーとご飯の混ざっていない、いわゆる普通のカレーライスが「別カレー」。そういえば、この店って何にでも生卵が乗っているよね、ハヤシライスにも。
E: ここでの正式名は「ハイシライス」ね。これも普通に頼むとルーとライスが混ざって出てくる。この店にとっては世の中と逆のことが本流なの。
T: そのほかAランチとかBランチとかエビフライ、ハンバーグ、ビフカツなどもある、いわゆる大衆の洋食屋さん。「名物カレー」は650円で、他のメニューもお手頃価格。
E: オレ、こういうB級洋食屋って大好きなんだよね。地元の人は串カツとかを食べていて、俺たちみたいなミーハー観光客が名物カレーを食べている(笑)。
T: ウンウン。
E: 久住(昌之)さんが以前ここで、「生卵はいらない」と言ったらちょっと戸惑った表情をされたんだって。そしたら、カレーを持って来たときに、「卵の代わりにルーを大盛りにしておきましたよ」って言われたらしい。東京だったらきっとそのままだったろうに……。大阪っぽい話だよね。
T: アハハハ・・・それは笑える。
E: なんでいらへんのやろこの人、ってアセっちゃったんだろうね(笑)。
T: オレは辛いのが苦手なんで、生卵のおかげでマイルドになって助かったけどね。意外とスパイシーなんだよな。そして、ここもまた名物そうなおばちゃんがチャキチャキと働いていたね。
E: そのおばちゃん同士がお互いの客のあしらいについて文句を言い合っていたところはご愛嬌(笑)。
T: 大阪と言えば、打ち上げで行った飲み屋がまたよかったね〜。
E: ムフフフ・・・。「鉄ぱん居酒屋 ここ家」ね。新梅田食道街という昭和の匂いがプンプンで、ディープな雰囲気のビルの中に入っている。あのビル俺、かなりワクワクしたな。
T: そこには居酒屋やラーメン屋、タコ焼き屋などが軒を並べているんだけど、その中からなぜその店を選んだのかと言うと・・・。
E: 実は・・・呼び込みをしていたお姉さんの可愛らしさに釣られて入りました(照)。
T: そのお姉さんはテキパキと働いていて、客あしらいも上手くて、みんな一瞬にして心を奪われちゃった。でも、後で聞いたらその店のオーナーの奥さんで、なんと女将さんだった。
E: てっきりバイトの大学生だと思ったんだけどなぁ。いやぁ、ワタシはファンになりましたよ。
T: でも、ダンナさんも感じの良い人だったから、これなら仕方ないと。
E: そうそう。ってオレたち何者?
E&T あはははは。
T: また、ぜひとも行きたいですな。
E: 食べ物も美味しかったしね。皆さんもぜひ。おススメですよ。
T: しっかし、先ちゃんは打ち上げとなると、毎回大はしゃぎだよね。
E: だって・・・楽しいんだもん(遠い目)。
T: はい、現実に戻るよ(笑)。そういえば、大阪のサイン会は、そんなにズラッ〜と並ぶわけじゃないのに、時間がたっても列が短くならなかったね。
E: 随分時間がかかったから、みんな並び疲れちゃったんじゃないかな。でも、関西人らしい絶妙な塩梅の人懐っこさで話しかけてくれる人が多くて、和気あいあいとした雰囲気だったよね。
T: やっぱり、地方のサイン会はいいですな。


E: それにしても、大阪から東京へたどり着いて食べた「喜楽」のもやし麺、めちゃくちゃ旨かった。やっぱり東京はラーメン旨いわ〜って心から思ったもん。
T: はははは。オレもそれまでワイン本の編集作業にどっぷりで土日も休めなくて、3週間も「喜楽」を食べていないという非常事態だったからな。
E: その日は朝ご飯抜きで。オレは朝起きたらまず何か食べて血糖値上げないとフラフラになっちゃうから、渋谷に着いたときはもう青色吐息。
T: 二人とも腹ペコだわ、禁断症状が出るわで大騒ぎ(笑)。
E: 実はワタクシ、これまで野菜の炒めたものや、トロミのついた野菜が乗っているラーメンが苦手でした。そういうものはラーメンとは違うジャンルの食べ物だと考えていました。
T: でも、タンメンは好きだったでしょ?
E: そうなんだけど、「ラーメン食べたい!」って時にタンメンはありえなかった。ラーメン食いたい時に、野菜入りラーメンは違うだろって思っていたんだよ。
T: それが去年くらいから食べれるようになったのはナゼ?
E: うーん・・・、やっぱり身体が求めていたというか、年をとったというか。もう、身体に優しいのがイイです。今では、むしろそっちのほうを好んで食べているよ。(なんかシミジミ)
T: その話を聞いて、それだったら「喜楽」の名物もやし麺を食べてよ、ってずっーと言ってたのに、なかなか行かんので、この日強制連行しました。
E: 低血糖状態で食べたもやし麺・・・旨し!あんなに美味しいのなら、もっと早く食えばよかったよ。
T: でしょー(少しエラそう)。でも、実はあの日の出来は、中の下だったんですよ。いつもは、味のコクや深さがもっと複雑なんだけど、あの日はスープが弱かった。
E: ふ〜ん。
T: 「喜楽」は味にバラツキが多いでしょ。特にラーメンにはそれが顕著に現れるんだけど、もやし麺は炒めた野菜がカバーしてくれるから、比較的いつでも美味しく食えるんだよ。
E: そんなのもやし初心者にわかるかいっ!徳さんくらい通わなきゃ無理(苦笑)。
T: そりゃそうだ。でも、もやし麺のスゴイときはスゴイんだよね、なんじゃこりゃ〜みたいな。
E: 今度はタンメンにチャレンジしてみようっと。
T: それも抜群に旨いよ。オレは土曜日がラーメンだったら日曜日はもやし麺。ちなみに週に3回行ける場合はワンタン麺を、4回行ける場合はタンメンとなります。
E: ハイハイ。(サラっといなして)じゃ、次の週の九州へと話を進めますか。


T: 先ちゃんの生まれ故郷の熊本と博多を巡る旅。
E: 熊本は十年前のサイン会ぶり。で、その時にめちゃくちゃ感動した「黒亭」のラーメンを食いに早速向かいました。


T: 店が新しくなって、しかも場所も移っていたね。
E: 昔の店は窓も大きくて開放的だったし、おばちゃんたちがキビキビ働いていたのに、なんかフツーのナウめな(死語)店になっていた。
T: とは言え、東京のナウイ店とは違う、九州らしい店だったけどね。
E: それに、ここ何年かの間にお土産ラーメンを売り始めてどこででも買えるようになったでしょ。実際、吉祥寺でも売っているし(寂笑)。そういったことや、今回の店の雰囲気からもアレッ?というのはあったんだけど・・・。
T: まぁ、ネット上でも味が落ちたという意見が出てたり、知り合いからもそんな話を聞いていたから、それを確かめるつもりもあって行ったんだよね。
E: 一縷の希望は持っていたんだけど・・・な。
T: オレも。だって、ラーメンの商品化はしたけど、チェーン展開はしていなかったから。
E: でも、何かが欠けていたね。まず、出てきたラーメンに全くオーラがなかったでしょ。
T: もちろん、美味しいラーメンであることは間違いないんだけど、十年前の感動がない。そもそもスープはぬるいし、麺が伸び気味だったからね。
E: 徳さんはオペレーションが乱れているって、業界っぽいこと言ってたじゃん。
T: 「喜楽」もそうだけど、繁盛店は一度にたくさんのラーメンを作るでしょ。そうすると、どうしても最初の人の麺は硬めだけど、最後の人は柔らかくなっちゃうしスープもぬるくなっちゃう。そうした場合でも均等な品質に仕上げる技と経験を「喜楽」の人は持っているんだけど、「黒亭」の人はマスターしていなんじゃないかと思ったんだよ。もちろん、ベテラン中のベテランだとは思うんだけどね。
E: 確かに、出てくるまで時間がかかったし、一度にまとめて出てきていたよね。
T: スープの味とかは落ちていないけれど、お客さんに美味しい一杯のラーメンを出そうというプロ意識、それが薄まっているように感じたよ。それが、結果として従業員の動きや、ラーメンの作り方のちょっとしたタイミングとかに現れて、今回みたいなことになっているんじゃないかな。
E: 以前は地元の人に愛されているような雰囲気が漂っていたのに、今回は観光客ばかりで地元の人はほとんどいなかった。なんか、そうなっちゃうのは、悲しいね。
T: でも、この店はいつか復活するような気がするけどね。若い子もいたけど、おばちゃんも元気で働いていたし。
E: そうなってくれるといいんだけどなぁ。
T: でも、大盛りが高いのは気にくわん。普通のラーメンが560円で大盛りは820円。なんと260円のアップ。店の人に聞いたら、チャーシューが増えるからって言ってたけど・・・。
E: オレが頼んだチャーシュー麺のチャーシューは豚モモ肉の特に柔らかい部分を使っているらしいんだけど、なーんかフツー。
T: 店のパンフレットとかを作るようになるとね・・・。
E: そういえば、ラーメン本に広告も出していたし、タウン情報誌にサービス券をつけていたりもしたね。
T: 良い店は決してそういうことはしないからね。しかも、あれは情報誌というよりも広告誌だし、ああいうのに出ちゃうと厳しいよな。
E: うん。(ため息)。
T: そんなこんなで意気消沈しながらも、もちろんサイン会はキッチリと務めて、夜の街へと。
E: 昼が不完全燃焼だったせいもあって、この日は飲んだ後にみんなでラーメン屋へなだれ込みましたな。飲み屋街の中心にある、リブロの店長がオススメの「天和(てんほう)」。


T: 良い意味でサッパリした味わいだったね。ラーメンの中でもとりわけ濃い熊本ラーメンだけど、この店のはコッテリしていなくてあっさり、だけど味はしっかりついている。そして、熊本ラーメンの特徴のニンニク的な味もしっかり。
E: 美味しかったね。飲んだ後に食べるラーメンとしても最適だよね。それ程胃にももたれなさそうだし。
T: 何より旨いしね。店を出ようとしたら夜遅かったのにすごい並んでいてビックリしたよ。
E: 「黒亭」も昔はこういう感じの良い店だったのに・・・商売に走っちゃったのかな。
T: 「こむらさき」みたいに?(苦笑)。
E: おっ、チクチクきますな(笑)。
T: そういえば、喫茶店のお姉ちゃんが教えてくれた「こだいこ」にも行ってみたかったなぁ。そこも飲み屋街の一角にあって、朝5時くらいまで営業しているらしい。
E: 店の佇まいも、いかにも良さげだったね。実はさ、あの日は猛烈に眠くて比較的早くホテルに帰って寝たでしょ。そのせいか、なぜか4時頃に目覚めちゃってさ・・・だったら「こだいこ」に行ってみるかと一瞬。
T: えっ?
E: だけど、外を見たら都会なのに真っ暗なんだよ、人通りもないし。それでテンション下がっちゃって、結局行くのはやめたんだけど。
T: うはははは。ふつう、夜中に目が覚めたからって、ラーメンを食いに行こうとは思わないよー。いやぁ、アナタは正真正銘のラーメン者になったよ(シミジミ)。
E: ラーメンに対しては貪欲ですから、オレ。それから、最近熊本の味として話題になっていると聞いた「太平燕(タイピーエン)」というモノも食べてみたかったんだけど・・・。
T: それなに?
E: 熊本の郷土料理で、店によって違うらしいけど、スープは豚骨や鶏がらがベースで、麺が春雨なんだって。どうも、チャンポンとラーメンの中間のような味わいらしいんだよ。中華料理屋で食べられるって聞いたんだけど、全然盛り上がっていなかったな。
T: ふ〜ん(全く興味なし)。
E: というか、熊本の街自体に活気がなかった、人も少なかったし。十年前は若い子がオシャレだわ女の子がカワイイわで、やたらと感動したんだけど・・・。
T: そうそう、あの時のイキイキしたところが消えちゃって、普通の地方都市になっていたね。
E: それに比べて、博多の街の元気のいいこと、活気のあること。博多は街のパワーとか洗練の方向とかが、地方都市の中で一番東京に似てる気がする。東京になりたがっている、というか勝つ気でいる都市だとオレは思うんだよね。
T: 九州人って自分の住んでいるところが一番だと思っているじゃん。
E: エーッ。熊本人は思ってないよ、もしかして大分県人は思ってるの?
T: 都市の大きさがという意味じゃないよ。だけど街の良さ、自然、食べ物、人の良さという面でやっぱり別府が日本で一番!だとオレは思っているもん。
E: えぇーーっ!(驚笑)まぁ、博多の人がそう思っているのは間違いないと思うけど・・・。
T: だから、博多の人もそれほど東京を意識してはいないと思うけどな。
E: だけど、東京に負けんというか、ヒケをとってはいかんという意識はあると思うよ。対抗しているというか・・・。だって、博多の人間は東京に来ても方言を直さないもん。オレは転校初日にすぐ直したけど(笑)。
T: そりゃ、いかんばい。
E: 熊本は日和見主義ですから。
T: うはははは。
E: で、博多での昼飯はもちろんラーメン。しっかし、今回のサイン会ツアーは毎回判で押したように同じ行動パターンだったね。
T: (笑)昼にラーメンを食って、コーヒー飲んで、サイン会をして、夜は飲み会というね。
E: オレたち、これまでに博多ラーメンは、もう十分っていうくらい食べ歩いているよね。
T: そういえば、前回の大分編の道場やぶりの後、すぐに博多編も更新するつもりだったじゃん。
E: あれってどうしたんだっけ?語っていないんだっけ?
T: そーなんよ。その時に「元祖長浜屋」や「一蘭」や「しばらく」など4、5軒は行ったんだけど、食べただけ(笑)。
E: もったいね〜。
T: 別にラーメンに対する情熱が冷めたわけじゃないんだけど、完璧にタイミングを逸したね。
E: そして、そのまま忘れちゃったのか。ダメですな、オレたち。
T: だから、今回はその時に美味しかった「元祖長浜屋」へ行こうと。


E: 今回も旨かったね。ここはやっぱり良い店だよ。もうオレ、博多はココでいい。これ以上ジタバタしないでこの店があればイイ(キッパリ)。
T: ビックリするほど美味しいワケじゃないけど、メニューのシンプルさとかお客さんの賑わいとか、サービスのよどみなさとか、ありとあらゆる面でイイんだよな。
E: メニューはシンプルの極みで、ラーメンと替え玉、替え肉しかない。その肉っていうのがチャーシューじゃなくて、煮た肉をほぐしたようなものでしょっぱめの味つけ。これが旨いっ。
T: ラーメンは400円で替え玉と替え肉は50円。フルセットで頼んでも500円。
E: エライっ!オレたちも替え玉頼んだね。
T: ふつうなら、一人一人前頼むんだけど、ここのは他の博多ラーメンに比べてやや麺の量が多いから、二人で一人前を注文。
E: そのときのおばちゃんのサービス、よどみなかったねー。
T: おばちゃんが替え玉持って来たとき、先ちゃんが「一人前を二人で食べたいので・・・」と大胆にも言って、何て無謀なことを頼むんじゃと思ったんだけど、そのおばちゃんは瞬時に言いたいことを理解して、「もうそれ以上は言わんでよし」みたいな感じで頷いた。そして、替え玉をラーメンに入れずパッとテーブルに置いたときに、「二人でお分けなさい」みたいにまた頷いていったでしょ。もう、あの一連のサービスっぷりにオレはシビれました。全然嫌味っぽくなくて、カッコイイ。お見事。
E: 見ていて気持ち良かったもんね。でも、やっぱり一杯目に比べて、替え玉は味が落ちるやね、スープも薄まるし。
T: 薄まったスープを濃くするためのタレがヤカンに入っているけれど、それを入れてもやっぱり一杯目の旨さにはかなわない。
E: でも、あのタレはいいね。
T: 店内には丸テーブルがいくつもあって、基本的に相席。そして、テーブル上にはお茶の入ったでっかいヤカンと茶碗、それからスープの味を濃くするタレが入った小さいヤカン、紅しょうが、ゴマ、箸箱がある。で、誰かが替え玉を頼むと、タレの入ったヤカンの近くに座っている人がそれを取ってくれる。


E: 何も言わないでもね。ああやって食べることにものすごく慣れている感じだよね。ゴマとかも自然に手渡ししてくれるし。
T: ホントに見事だよ。これはネットで見たんだけど、やっぱり「元祖長浜屋」のことをイマイチだという地元の人もいるわけだよ、好みだから。だけど、「博多人にとってのソウルフード」って書いている人がいて、オレはまさにその通りだなと思ったんよ。心の故郷なんだよ、この店。
E: ほぼ24時間営業でいつ行っても開いていて、いつでも混んでいる。なくなるとみんなが悲しむし困る店なんだよね。
T: そういえばこの店、今年の春先に突然閉店になっちゃって大騒動になったらしいよ。結局は何らかの理由での一時閉店だったんだけど、復活したときはテレビ局まで取材に来たんだって。
E: ヘリコプターも何台も飛んだってね。
T: それは大袈裟(笑)。それくらい博多の人にとってはなくてはならない店で、それを痛感できます。
E: 吉祥寺住民にとっての「ボア」(老舗喫茶店/07年10月初旬で閉店))みたいな存在ですな。みんなそれほど行かないくせに、なくなると淋しい。閉店前はすっごい混んでいて入れなかったもん。
T: 東京にこんな店があったらいいのに。
E: ないからいいんだよ。でも博多に行くといつもそこにある。それがいいんじゃん。東京にも長浜屋の看板をつけた店はいくつもあるけれど、全然別モノじゃん。東京じゃあの雰囲気は絶対に出せないね。
T: あれはお店とお客さんの両方あってのモノだからね。ホントに素晴らしいから、「元祖」とつけて当たり前だし、つけるべき店だね。
E: だから、博多はココでいい。
T: これを読んでいるアナタ、博多に行った際にはぜひ行ってください。
E: そんな幸せ気分で、サイン会場の平尾に向かいました。
T: 平尾というのは博多の天神から西鉄に乗って2つ目の駅。庶民的な雰囲気もあるちょっと高級な住宅街。
E: リブロ平尾店の栗田店長が連れていってくれた「フープラ」というカフェ、ここが良いお店だったね(ニッコリ)。比較的新しい店なのに、オレの漫画がズラッと本棚に並んでいたり、主に80年代のレコードジャケットがたくさん飾ってあったりする。マドンナとかワム!とかA−HAとかU2の初期のアルバムとか。その中に俺さえ持っていない、ひばりくんのレコードもあったりして・・・嬉しビックリ。


T: 江口さんが来るからこういうディスプレイをしたのではなくて、普段からこういう雰囲気で80年代の音楽を流しているんだって。いやぁ、なんとも気持ちの良い店でした。
E: 徳さんがツボだったのは、プリファブ(プリファブ・スプラウトというイギリスのバンド)が流れてたからでしょ?
T: ウン!(眼がキラキラ)感動したよ〜。心から好きなバンドの曲、しかも、プリファブはそんなにメジャーじゃないから、外で聞けるなんてめったにないからね。それだけで奇跡でしょ。
E: こういう店って吉祥寺にありそうでないんだよね。
T: あったら、オレたち間違いなく入り浸り。
E: 最近、また吉祥寺や西荻にカフェが増え始めているんだけど、オーナーが自分の趣味を見せたいだけみたいなところが多くてさ。そもそもカフェなんだから、食べ物がまずかったら飲食店としてダメじゃん。その点、この「フープラ」はオーナーの趣味は丸出しなんだけど、コーヒーもきちんと美味しかったし、BGMの音を控えめにして会話の邪魔にならないようにしたり、としっかりお客さんのことを考えている。居心地良く過ごしてもらいたいというオーナーの気持ちが見えて嬉しくなっちゃった。
T: 夜は飲み屋になるみたいだから、プリファブでも聞きながらゆっくりと飲みたいなぁ。
E: そりゃ気持ち良かろう。オーナーのフカミさん、がんばって下さい!
T: 東京から応援してまっせ。
E: 博多では「元祖長浜屋」でラーメンを食い、「フープラ」へ行く。その2軒があればイイ。
T: またそれか(笑)。それと、夜に行った居酒屋も驚くほど安くて、すっげぇ良い店だったじゃん。
E: 何を頼んでも280円!
T: 感動的に安かった・・・店の名前は忘れちゃったけど。
E: 俺たち、ああいう店って大好きなんだよね。それでもって、博多の夜もはしゃぎましたな。
T: 先ちゃん、スパークしすぎ(苦笑)。
E: 朝6時までカラオケ、歌いまくり。しかも、いま頃、渋谷系シバリの。いやぁ、楽しかったワ。そんなハイな気分のままホテルへ帰って、着替えようと思ったら・・・下着がない!
T: うははは。そういえば先ちゃんさ、広島にも下着持ってくるの忘れてたよね。
E: (モジモジ)・・・ウン。
T: 江口さんの荷物って明らかにオレより大きくて重いけど、一体何が入っているのさ?
E: いやぁ・・・あれは・・・デジカメやケイタイ、i-pod、ひげそり、それぞれの充電器が・・・それで重いんですよ。
T: なんじゃ、そりゃ(笑)。使いもしない充電器類は入れて、肝心の靴下やパンツは入れ忘れかい。
E: 九州のときは、帰りに水俣に立ち寄ることが頭から抜けていて足りなくなっちゃったんだけど、広島のときは今自分が履いているのしかなかった(笑)。なにせ、朝まで飲んでいたもんで。
T: しょうもない(笑)。旅慣れているわりには荷物が多いのが不思議なんだよな。
E: っていうか、徳さんが少なすぎるんだよ。文庫本とか持ち歩かないの?オレは旅にはいつも最低2冊は持っていくよ。
T: アンタは新幹線でも飛行機でもいっつもひたすら寝ているじゃん!そして、夜は飲んだくれてるのに、いつ本を読むのさ!!
E: はははは。実は最近それに気がついて、もう文庫本とi-podは持っていくのをやめました。ま、そんな騒ぎのあと徳さんと別れて、ワタシは故郷・水俣へと一人で向かったワケです。
T: ウン。
E: 仕事の打ち合わせと親戚回りで14年ぶりに帰りましたよ。せっかくだから、ラーメンも食べようと意気揚々と出かけたのに食えませんでした。
T: そりゃまたどうして?
E: 親戚パワーがすごくて、あちこちに顔を出しているうちに、アッという間に時間が経っちゃった。オイラ、親戚の前では形無しです。
T: 夜中に一人で食べにいくこともなかったの?
E: あのね、水俣は夜暗いから、怖いんだよ。も、ハンパじゃなく真っ暗なんだよ。
T: なんだ、それ(笑)。
E: 打ち合わせも兼ねて知人と飲みに行った帰り、親戚の家まで歩いて帰ったんだよ。午前1時頃だったけど、道はわかっているし大丈夫だろうと思っていたら・・・迷っちゃってさ。1時間以上歩き続けてやっとのことでたどり着いた。道がビミョーに変わってたというのもあるんだけど、とにかく暗くて暗くて。人っ子ひとり……犬さえいない。
T: ウハハハ・・・(爆笑)。
E: 街が過疎化しているから、昼間でも若い子が歩いていないんだよね。何軒かラーメン屋もあったけど、心惹かれるところはなかったし。町の普っ通〜〜の大衆食堂でチャンポン食べたら、豚骨の匂いがプンプンのチャンポンでびっくりした……くらいかな……。
T: 尻つぼみですな。で、翌週15日土曜日の渋谷と、16日の池袋をはさんで、翌17日に沖縄へと乗り込みました。


 (後編へつづく)